茶功アカデミー

「緑茶」というラベル

「これ、緑茶じゃなくてプーアル茶ですね?」「緑茶です。」
明らかに感じられる発酵臭とウッディーな味わい。青々とした鮮烈な爽やかさを求めて緑茶を所望したのが、ちょっと外れたよう。ルアンパバーンのお茶屋にて。

ラオスの茶産地は、特に北部の中国・ベトナムの国境に接するポンサリーが有名で、樹齢千年と言われる茶樹から作られる古樹茶には深いコクがあります。ウドムサイ、ルアンパバーンでも良質な茶葉が作られていて、スーパーの棚には普通に古樹茶が並んでいます。
そのラベルが、「緑茶」なんです。

実は中国茶に詳しい方ならご存じのところで、あの茶色くて土っぽいというイメージのプーアル茶は「晒青緑茶」とも称されます。
厳密にいうとプーアル茶の中でも「生プーアル茶」が晒青緑茶でして、独特な微生物発酵プロセスを経て作られる「熟プーアル茶」はラオスでも別個に扱われている傾向があります。

晒青緑茶、生プーアル茶は、煎茶と同様の製造工程ですが、日に晒すことによって乾燥を進めます。また、その殺青温度が比較的低めなので微生物が完全に死滅せず残り、このため経年で熟成し味が変化します。その年のものならまだ青さを感じ、「緑茶」のイメージと重なるものの、数年経った生プーアル茶に「緑茶」の印象はありません。

ところで、各地のお茶には、それぞれ独特の味わいがあります。それは、山の標高、霧の深さ、気候のサイクル、また土の種類、水の性質、微生物など環境要因があり、これを「風土」と言ってもいいでしょう。また、作り手の技巧、製茶設備と工程など人的要因があり、これは「文明」と呼べます。
この風土と文明のそれぞれの性質と両者のバランスによって、土地のお茶の独自性が決まってきます。

例えば、「風土」に比較的寄っているのが白茶。陰干し、自然乾燥で仕上がるため、微生物を含めた環境要素が温存されるのです。土地の大自然をそのまま味わいたいと思ったら、まず白茶ということになります。
また、煎茶の意味合いでの緑茶は、その瞬時の高温殺青および丹念な揉み込みによってシャープでドライに仕上がるため、風土から土を取り除いた「風」と「文明」のお茶といえます。
そして生プーアル茶は、両者のバランスがうまくとれています。熟練の職人による製茶処理と、火を強く入れずに太陽に乾燥を委ねること。「風土」と「文明」が絶妙な地点で折り合い、そこには洗練されたお茶の姿が宿っています。

さて、ルアンパバーンを後にしてから、「緑茶」と言われた生プーアル茶を飲み続けていると、ふと、ある種の青さが立ち上ってきました。何というか、磯というか、海苔っぽい感じ。これはなるほど、カイペーン。北ラオスの名産、珍味の川海苔です。海のように雄大なメコンの風土を感じる一杯。この地ならではの、青さ。